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  3. 2018.7.20

At the bottom of the cliff崖の下で

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昔のホストペアレントの2組を最近訪問した。ホストマザーが薬局での仕事へ行く準備をしているとき、私は彼女が、厚い透明なプラスチック製のバッグに物を入れているのに気がついた。彼女は説明した:「ああ、うちの薬局は従業員が物を盗む問題があって、スタッフは全員、今はこのバッグを使わないといけないの」。

それを聞いて、私はフロリダのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちのことを思い出した。この高校で銃撃事件があって以来ずっと、生徒たちは透明なバックパックを使わなければいけなくなった。バックパックに武器を隠しにくくするためだ。

こうしたいわゆる「解決策」は、ニュージーランドの人たちが「ambulance at the bottom of the cliff(崖の下の救急車)」と呼ぶかもしれないものだ。これらは、問題の本当の原因を調べることを怠った措置だ。誤って崖から転落したら、下にいる救急車が助けてくれるかもしれないが、他方、死んでしまうかもしれない。これよりもはるかに適切な解決策は、崖の上に頑丈なフェンスをしておくことだろう。薬局のケースでは、スタッフのことをもっとよく知っておくことが、盗難を抑制することに役立つかもしれない。学校での銃撃事件を防ぐ場合は? その議論は今でもアメリカで勢いを増している。

透明なかばんに潜むのはプライバシーの問題だけではない。それは、誰も信用できないという印象も与え、憤りや不信の感情につながり、ネガティブな環境を生み出してしまう。

女性専用車両もまた、「崖の下の救急車」の例だ。女性専用車両は、女性により安全な空間を生み出すが、大多数の男性は信用できないという感覚も生み出す。そして、男性は自分たちの行動について個人的な責任を持たなくてよいという感覚も生む。なぜ、一部の男性が女性に暴行してもよいと感じるのかという問題に対処するのではなく、女性が女性専用車両に避難することで自分の身の安全に責任を持つように求められている。

日本では多くの会社で、従業員は週に1度、午後5時に帰宅させられている。今では、「蛍の光」を流してオフィスのまわりを飛びまわるドローンもある。「蛍の光」は、従来から、客に帰る時間だとやんわり伝えるために店で使われてきた曲だ。こうした会社は、職場の文化や仕事の量、賃金、給料といったものを考えずにこうしたことをしている。私の生徒の多くは、忙しくないときでも忙しいように見えるようにする必要があると感じている。最も効率のよい労働者は、手取りの給与が少なく終わってしまうことも多い。多くの人々が、家族や自分の生活を支えるために残業代に頼っているからだ。

透明なかばんや女性専用車両、強制的な終業時間。これらは手っ取り早い解決策は取り入れるのが簡単なのかもしれないが、こうした問題の背後にある人間関係を理解し、修復し、強化することにきちんと取り組むまで、私たちの解決策は「崖の下の救急車」であり続けるだろう。

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