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  3. 2019.8.16

Stretching the truth誇張

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昔、不動産業者が石狩市のコテージを私に見せてくれたことがある。そのコテージは日本海を見下ろす崖の上にあった。その不動産業者はウッドデッキに私を案内して、積丹半島を指差した。積丹半島は遠くに、私たちが立っていたところから南へ向かって広がっていた。「このデッキからおたる潮まつりの花火が見られますよ」と彼は得意げに私に言った。

そのコテージは結局、私のスタジオになり、作品を作って年に6ヵ月過ごした。祭りの時期になると、街に住む友人たちが、私の海辺のスタジオへ、コテージのデッキから花火を見ようと集まった。しかし、最初の3年間は、雲が多かったり、雨が降ったりして花火が見られなかった。ときどき、花火が破裂するポンとはじけるような音が聞こえたが、何も見えなかった。

スタジオに来て4年目の夏、花火を見るのにぴったりの美しく晴れた夜に祭りが行なわれた。最初は花火の音は聞こえたが、何も見えなかった。とても度の強い双眼鏡でもう一度見てみると、ようやく色のついた点を幾つか見つけた。しかし、花火の大半は私の小指の爪ほどの大きさだった。がっかりしたが、不動産業者はうそをついていたわけではないと気がついて笑った。

数年後、別の不動産業者が豊平川の土手のアパートを見せてくれた。豊平川は札幌市を通って流れている。そのアパートは、川岸の公園の隣にあり、札幌市民は7月になると市最大の花火大会を見に集まる。リビングルームの窓の外を指差して、不動産業者の男性は「あちらが川の土手でまさに花火が打ち上げられる場所です」と言った。

友人たちは私たちが新しいアパートに引っ越したとき、喜んだ。花火を見に家に呼んでほしいと友人の多くが頼んだ。待望の夜、空が十分に暗くなるとすぐに、花火が爆発する大きなとどろきが聞こえた。花火の光に照らされた大勢の見物客の姿も見えた。しかし、どの窓から外を見ても、実物の花火は見られなかった。バルコニーからも見えなかった。

私たちの建物は左右をもっと高い建物に囲まれていて、空の見える範囲が制限されていることが分かった。さらに、私たちの建物の屋上は安全上の理由で立ち入り禁止になっていた。だから、花火が事実上は私の足元で打ち上げられ、頭の上で開いていても、インターネットで花火を見るはめになった。またしても、自分自身を笑うしかなかった。不動産業者はうそは言っていなかったのだ。

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