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  3. 2020.3.20

All the colors in the box全ての色

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以前、一日の終わりに息子たちを迎えるために保育園の庭で待っている間に友人と会話をして動揺したことがある。その友人は「あなたの息子さんの作品はほとんど全部真っ黒ですね」と言った。「もし彼が私の息子だったら、心配になります。息子さんに臨床的うつ病の検査を受けさせた方がいいんじゃない」。返事を考える間もなく、子どもたちが教室から出てきた。息子の手を取り、私たちは家まで短い距離を歩いた。家に着くまでずっと、今日したことについて彼はうれしそうに話した。

私は個人的には、黒は素敵な色だと思う。墨汁は私のお気に入りの絵画材料だ。黒を身につけるのも好きだ。実際よりも少しやせて見えるからだ。弟はお金のない大学生だったころ、手持ちの服を黒のTシャツ、黒のジーンズ、黒の靴と靴下に限定していた。彼が言うには、それは時間とお金の節約になり、持っている服の全て、コーディネートが合うのだそうだ。

私の妹の1人は、手話通訳者だ。彼女は仕事のときはいつも黒を着ている。それは、背景が暗い方が、クライアントにとって彼女の色白の手が見やすいからだ。おそらく、肌の色が濃い通訳者なら、それと同じ効果を出すために淡い色の服を着るのだろう。だから、黒は美しいだけでなく、大変実用的でもある。私の息子が黒のクレヨンを他の色よりも多く使うからといって、なぜ友人が彼の精神の健康状態を心配するのか理解できなかった。

彼が8歳のとき、私たちは地元の人気アーティストが運営する非営利的なアートスクールの授業を息子に受けさせる機会があった。授業へ電車で息子を連れていき、彼を家に連れて帰るまで、作業場の静かな隅で本を読みながら待っていた。

ある日、その先生が息子に話し掛けるのが聞こえた。「黒が好きみたいだね」とその先生は言った。息子は恥ずかしそうにうなずいた。先生は微笑んで、こう続けた。「私も黒が好きです。だけど、黒のクレヨンや絵の具を使わずに、同じ色が作れるのは知っていましたか?」。息子は混乱していた。私もだった。

「やってみましょう」とその先生は促すと、間もなく、息子は彼の大好きなロボットと宇宙の怪物を、青、紫、緑、茶など他にもたくさんの暗い色を何層にも重ねて描いていた。彼の絵は遠くから見るとまだ黒に見えたが、間近で見ると彼の新しいバージョンの「黒」は豊かで深く、クレヨンが重なっていない隙間に明るさの痕跡があった。

息子は今、宇宙の神秘を愛する物理学者になっている。彼は今でも作品を作っている。彼は今でも黒が好きだ。しかし、今は箱の中に入っている全ての色を使って黒を生み出している。

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