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  3. 2020.5.15

Circles of life and death生と死の円

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アメリカでロックダウン(都市封鎖)が実施されている間、私は家に隠れて、アイルランド人の作家コラム・マッキャンさんの素晴らしい新刊を読んでいる。これには、特にこの困難な時期に役立つ貴重な教訓が書かれている。

この本のタイトルは『アペイロゴン』。アペイロゴンは無限数の辺のある多角形のことだ。アペイロゴンの一種は円で、この本について考えるのによい方法だ。

この本には1,001の章があり、古典作品『アラビアン・ナイト』の1,001話へのオマージュとなっているのかもしれない。しかし、1行しかない章もある。写真しかない章も。1語と空白だけの章もある。多くの章は驚くような寄り道をしていて、主題が変わり、その後、メインテーマにしばらくして戻る。

この本は、エルサレムに暮らすイスラエル人のRami Elhananとパレスチナ人のBassam Araminという2人の男性の実話に基づいている。彼らはお互いに終わりのない戦争で相対する立場にいて、どちらもこの分別のない戦争で若い娘を1人亡くしている。彼らは憎くてたまらない敵同士であるはずだ―それでもどちらも平和を欲している。章は円を描き、踊り、歌い、二人の中心にある悲しみへと曲がりくねって戻っていく。しかし、これは気持ちが塞がるような本ではない。そうではなく、これは一種の詩であり、心を打つ生の祝福、そして悲しみであり、ランダムに現れる観察や逸話、次第にまとまって見事に美しい全体へと向かう素晴らしい断片であふれている。それは1つの円である。

私は古代アラビアの詩の一種『ガザル』を思い起こした。ガザルの対句は全く関連し合っていないように見えるが、それでも詩の最後には、全てが不思議とつながっていて、意味を成すのだ。ガザルを読むのは「壊れた鏡の中を見ているようなもの」と表現する人もいる。

マッキャンさんの章は、ガラスの欠片のようだ。詩的で魅了されることの多い関連のない断片を読んでいくと、違った角度から、また違った場所から見た主題に芸術的に織り込まれていることに気がついた。この本は、欠片の実験であり、また不思議に完全でもある。

架空の詳述に満ちてはいるものの、『アペイロゴン』の真の中心はBassamとRamiだ―彼らに実際にあった悲劇と、彼らの人生に現れる人々や起こる出来事だ。実世界が彼らをさまざまな方法で引き離すにも関わらず、2人は友人同士になった。私は彼らの高潔さと、報復に背を向け、中東の平和に献身している元イスラエル兵とパレスチナ兵から成る非政府組織「平和を目指す戦闘員の会(Combatants for Peace)」の設立を助けることで、彼らの娘を称えるという決心に、心が高揚した。

『アペイロゴン』を読んで、新型コロナウイルスのパンデミックに対する世界の対処の仕方を考えずにはいられなかった。世界で協力するのではなく、各国や各州、各都市は現在、自分のところだけを守り、医療機器をめぐって争い、人々を恐怖の壁の向こうへと隔離しているように見える。BassamとRamiは私たちに別の方法を示している:このパンデミックに勝つために和解し、協力して働くということだ。

私が家にこもっているとき、この本は希望の光を与えてくれる。

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