新型コロナウイルスのパンデミックのさ中で、HBLがシンガポールでよく知られる頭字語になってきた。
HBLとは「home-based learning(自宅学習)」を表し、4月1日に開始した時には、週に一度の活動となる予定だった。教育省は、毎週1日、生徒は自宅で学習すると発表した:水曜日は小学生、木曜日はセカンダリースクール生、金曜日はジュニアカレッジ生となる。その目的は、必要がある場合に自宅学習がもっとできるように誰もが準備できるようにすることだった。
そうなるまでに長くはかからなかった。新型コロナウイルスが拡大するにつれて、学校では4月8日から、毎日自宅学習を実施するようになった。
自宅学習にはワークブックやワークシートといったオフラインでの学習も含まれるが、「スチューデント・ラーニング・スペース」と呼ばれるデジタルプラットフォームを使ってのEラーニングもある。つまり、生徒たちはノート型パソコンやタブレット、安定したインターネット接続環境が必要だということだ。
豊富な手段のある家族でも、親が在宅ワークと何とかこなしながら、子どもたちをサポートしたり監督したりしなければならなくなることもあり、自宅学習はストレスの多いものになりうる。恵まれない家庭では、自宅学習はさらに大きな障害となる。
まず、全ての家族が、十分な機器や安定したインターネット接続環境を持っているわけではない。学校や地域団体が、機器やドングル(コンピューターに接続する小さな装置類)を貸し出して支援してはいるが、これで常にうまくいくわけではない。機器を壊してしまって、修理代を支払わなければならなくなったらと恐れて、借りることをためらう家族もいる。
次に、家庭の環境がいつも自宅学習に好ましいというわけではない。例えば、とても狭いアパートで暮らしている家族は、学校の勉強に子どもたちが集中できるような良い学習スペースがないかもしれない。学年の違うきょうだいが騒がしい環境で1つの機器を共有しなければならないときは、その問題が悪化する。
3つ目に、生徒の家族が監督できない可能性がある場合、生徒にとって自宅学習は難しくなりうる。学校では質問や困ったことがある場合のために教員がいてくれる。しかし、面倒を見てくれる人や親が全員、それと同じレベルの手助けができるわけではない。さらに、収入の少ない親の多くは、仕事をなくしたり、収入がなくなったりしているために、普段よりもストレスを感じている。
いいニュースは、必要があれば生徒が学校に継続して戻ってくることを許可している学校もあることだ。多くの地域団体では、特に、多くの機関がパンデミックのさ中で運営を停止しているときに、その社会福祉制度における欠陥を補う取り組みを強化してもいる。ある団体では、例えば、中古ノート型パソコンを回収して修理し、低所得世帯の生徒たちに無料で提供している。
教育は社会の不平等を是正する優れたものの1つだ。不平等というものは、どの社会にもいや応なく存在する。それゆえ、可能な限り条件を誰にとっても公平にすることが重要だ。システムが変わるのにはしばらく時間がかかるかもしれないが、当面は、私たち1人1人全員が何か役に立てることがきっとあるだろう。