エレベーターが到着するのを待っているところを想像してみよう。エレベーターが着くとドアが開いて、うれしいことに、有名人が2人、中にいたとする。あなたはずっとその人たちと話してみたいと思っていて、今まさにそのチャンスがやってきた。それは誰であってほしいだろうか?
私がこの質問を初めてされたとき、ビヨンセとミシェル・オバマがパッと思い浮かんだ。しかし、それからさらに考えてみた。実際のところ、彼女たちに何と話し掛けるだろうか?私はどうするだろうか?それに、その2人はすでに親しいので、彼女たちはおそらくすでに話しているだろうから、話をさえぎるのは気が引けるだろう。
最近、そのエレベーターで会ってみたい人が1人だけいる――ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相だ。毎日国を運営していくだけでも十分に難しい。アーダーン首相は、しかし、ここ16ヵ月間に、ニュージーランド史上最悪の銃乱射事件、悲惨な火山の噴火、そして今や新型コロナウイルスの大流行の中、指導者としてを国を導いてきた。そして、彼女は何というリーダーだっただろう。
アメリカで実施された効果的なリーダーシップコミュニケーションに関する調査によると、どんなリーダーも自分の決定で全ての人を喜ばせることはできないが、優秀なリーダーが優れている分野が3つあるという。優秀なリーダーは、明確な指示を出すことができ、そうした指示に意味を与えることができ、それを行なっている間に共感的であることができる。私はこれらの分野を、What(何)、Why(なぜ)、We(私たち)と呼んでいる。この調査によると、他者のやる気を出させるのに成功するには、この3領域全てが同等に重要に扱われる必要があると述べている。リーダーはWhatとWhyの領域については専門家に相談できると思う。しかし、あなたたちはみんな同じ仲間だと人々に感じさせることは、ずっと難しい。
アーダーン首相は、ニュージーランド全国でのロックダウン(都市封鎖)を発表したときに、これら全領域における彼女の能力をはっきり示した。「家で過ごし、命を守りましょう」という簡潔なメッセージが、自信と温かみを持って発表され、彼女はこのWhatとWhyとWeをうまくやってのけた。首相は、物事を前向きに言い表すように注意もしていた。「買い占めをしないでください」と言うのではなく、彼女は人々に普段通りのどおりの買い物をしてくださいと頼んだ。その理由も明確に伝えた。彼女がカジュアルな家での服装をしている様子や、疲れから文章を言い間違える様子を見せている首相のフレンドリーなフェイスブック上のライブビデオは、人々に彼女も「私たちのうちの1人」なのだという印象を与えた。
さて、このエレベーターのドアが開いてジャシンダ・アーダーン首相が中にいたら私はどうするだろう? まず、私はニュージーランドにいる友人や家族が安全でいられるように難しい決断を速やかにしてくれたことについて、彼女にお礼を言うだろう。それから、ウェリントンでお気に入りのカフェやレストランはどこかを尋ねるだろう。そして、物理的距離の確保についての規則にもよるが、ハグをしてもいいか尋ねる。なぜなら、どういうわけか、ニュージーランド人は近しい人々以外の人とは距離を取らなければいけないとはいえ、私は彼女が私たち皆をとにかく一つにしてくれるのに素晴らしい仕事をしてくれたと思うからだ。