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  3. 2021.12.3

Killer silence命取りの無視

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Heartbreak(ひどく悲しい思い)。Hurt feeling(痛む気持ち)。Emotional scarring(感情の傷)。この3つに共通することは何だろうか?ありがたいことに、私が今感じていることとはどれも無関係だ。そうではなく、これらは気持ちの痛みを表現するのに肉体の痛みを表す言葉を用いている。

研究者たちはこの言語の特徴は多くの言語に存在していると指摘している。私も、昨年漢字の勉強を再開してから、確かに日本語におけるその特徴に気が付いてきた。肉体の傷を表す漢字は、人の感情の痛みについて話すときに使われるものと同じだ。私は数ヵ月前、さらにもっと深刻な響きのある漢字に出くわした。それまでは、「ignore(無視する)」を表す言葉は「無視」しかしらなかった。この漢字は、基本的に「without(~なしで)」と「look at(~を見る)」だ。「ignore」の別の表し方であるその新しい漢字は「黙殺」―「silence(沈黙)」と「kill(殺す)」―だ。

「黙殺」はとても硬い文章で主に使われるようだが、この2文字の組み合わせは強烈だ。そして、アメリカのデューク大学の研究では、無視されることや拒絶されることで誰かの殺人に至る場合があることに示されている。研究者たちは学校での銃撃事件15件を分析し、犯人の13人は社会的に除外されることに苦しんでいたことが分かった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックもまた、多くの人々の社会的生活を混乱させてきた。私は日本におけるこの社会的なつながりの欠如の増加が、注目を集めているハロウィーンの日に東京の電車で発生した最近の刺傷放火事件に何らかの関連があるのではないかと思っている。

アメリカの他の研究者たちは、コンピュータで生成されたキャッチボールのゲームを使って、拒絶されるという行為をシミュレーションした。被験者は2人の他者とキャッチボールをし、ボールは全員の間でパスされる。ある時点で、被験者は除外されて、被験者以外の2人の間でのみボールがパスされる。脳のスキャン画像は、この一見すると些細な除外により、肉体の痛みに関連する脳の部位が反応することを示した。これと同じ部位は、人が腸の痛みと同じくらい深刻な何かに苦しんでいるときにも活性化する。

それではなぜ、私たちの脳はこのように反応するのだろうか?研究者たちは、人類はいつも生存のために社会的集団に頼ってきたと述べている。私たちの脳に関する限りは、傷ついた心は骨折した腕と同じくらい重症だ。

この研究について知ったことはためになった。同じランナーにあいさつを無視されると、どうしてこんなに動揺するのだろうかと私はかつて困惑していたものだった。朝のとんでもない時間帯で、起きているのが自分たちしかいないようなときに無視されたときは特にそうだ。今はどうしてこれがこたえるのかよりよく理解できる。少し悲しい気分になるときに、過敏になり過ぎているわけではなく、ただ人とつながりを持とうとしているだけなのだろう。私にあいさつを返してくれる一握りの人々の微笑みや親切なランナー、散歩の人、ストレッチをする人たち、軽い会釈をしてくれたり、明るく手を振ってくれたりする人たちに感謝したい。彼らのジェスチャーはささやかかもしれないが、その効果は強大だ。

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