増えゆく不確かさに満ちた世界の中で、私の暮らしに入ってくるあらゆる種類の喜びや楽しみを受け入れることが私にとって役立ってきた。最近あったそんな出来事の1つは、中年の男性と大きなピンク色のマスコットとの心温まるやりとりだった。
私はずっと前から日本の素晴らしい、そして変わったご当地マスコットのファンだ。そうしたマスコットの中には、かわいらしいものや笑えるものもあれば、ちょっと気持ちの悪いものもある。愛媛県に住んでいたとき、私は自分の市のマスコット「まちゅりちゃん」の大ファンだった。それは、タヌキとハムスターの最高にかわいい組み合わせで、お腹は大きな太鼓のように見える。まちゅりちゃんの特徴的な動きの1つは、太鼓のばち2本をポケットから取り出して、お腹の太鼓をたたくことだ。それはみんなに、このマスコットの衣装がかわいくて実用的でもあることを見せている―好きにならない理由はない。
小さな町の中ではやることがそれほどたくさんはなく、私は気づけば、できるだけたくさん写真を撮る機会が得られるように、まちゅりちゃんのソーシャルメディアをフォローしていた。着ぐるみの中にいる人はきっと、私がストーカーだと思っていただろう。それに、私はたぶん、そうなる恐れがあった。
だから、結局(四国から)本島に引っ越すことになってちょうどよかった。今住んでいる市のマスコットはそれほどクリエイティブではない。着ぐるみを着た人が何かを売ろうとしているところを見るのも稀だ。
それは、数ヵ月前までのことだった。そのとき、私は道路を渡るのを待っている間に、ピンク色のマスコットが通行人に元気よく手を振っているところを見た。そのマスコットは、ピンク色の体で、耳はハート型だった。
遠くから見て、私は最初、ウーパールーパーのつもりで作られたものだと思った。しかし、その種類の動物はちょっと変わっていた。もっと近づいてみると、このマスコットがネイルとまつ毛のサロンのチラシを配っているのが見えた。私はどちらのサービスも利用しないが、このマスコットには親しみを込めて手を振らずにはいられなかった。巨大な目で、とても陽気に見えた。
このマスコットの存在は、たとえそれがマーケティング目的のためだったとしても、私だけではなくて、他の多くの人々をも元気づけているように見えた。先日、中年の男性がこのピンクのマスコットに歩み寄り、スローモーションで片手のハイタッチをしているところを見た。マスコットはその後、飛び跳ねて、手をたたいていた。
私がこの男性を通り過ぎるとき、彼がマスクを着けていたにも関わらず、満面の笑みは目まで届いて、喜びで目が輝いているのが見えた。私もマスクの下で、満面の笑みになっているのに気づいた。私は実際、どうにか自分を抑えてこのピンクのマスコットを実際に抱きしめるのを止めていた。だが、次に見かけたら、私もこのマスコットにハイタッチをするかもしれない。