新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のロックダウン中の多くの他の人々のように、私は自分のキッチン好きを再発見した。冬には私は焼き菓子やパン作りを楽しみ、家族はいつも、週末にオーブンから次々と出てくるクッキーやパイ、マフィン、スコーンを堪能した。
焼き菓子やパンを焼くことは、ほんの何つかみかの粉と、スプーン数杯のあれこれ、わずかな水分から食べ物を作り出すという素晴らしい達成感を与える。
店で買ったものよりも自家製を好むことは、それがぜいたくだという人もいれば、必要に迫られてという人もいるだろう。
私は日本に住んでいたとき、スパイスのきいたおいしいイタリアンソーセージを見つけることができなかったので、インターネットで注文したキットの助けを借りて自分で作り始め、参加する全てのバーベキューですぐに人気者になった。
カナダでは、店で購入すればあらゆる種類のアルコールに高い税金が課されているが、技術があって、時間をかける気があれば、自分でビールやワインを作るのには1杯あたりわずかしかかからない。結局のところ、ビールは水、大麦、イースト、ホップ、そして時間で出来ているにすぎないではないか。技術を身につけるまで少し時間がかかるが、私の弟と彼の友人たちのような一文無しの学生たちにとって、少し追加で勉強することが安い酒のための妨げになるともしあなたが思うなら、かなり間違っている。
最近、私はサワー種で発酵させたパンを焼いている。このパンは、私が子どものときに、近所に住んでいたイタリア系の移民のことを思い出させた。
妻のパコニさんはほぼ毎日自家製パンを焼いていた―重くて、みっちり詰まっていて、弟が今でも愛しげに話すおいしいローフだった。パコニさんは自分で作れるのに、乾燥パスタと瓶入りのトマトソースを店で買うなんてカナダの主婦はどうかしていると考えていた。彼女は、ほとんど毎日フレッシュパスタを作り、晩夏には全て庭で採れた材料で数十本の瓶入りトマトソースを作っていたものだった。
夫のパコニさんは、菜園の達人だった。裏庭の駐車スペース2台分ほどの広さの一区画に、彼はトマト、ピーマン、玉ねぎ、サヤマメ、人参、ニンニク、きゅうり、無数のハーブを育て、ある年にはトウモロコシさえ育てていた―全て妻のパコニさんによって、ピクルスにされたり、ソースやその他の保存食に加工された。彼は、毎年秋にひと樽分の自家製ワインを作り、毎年春には、気温が氷点下以上になるとすぐ、自家製プロシュート(生ハム)を作るために、小さな子どもくらいの大きさの豚の後ろ足をガレージの天井からフックにつるし、何ヵ月も毎朝毎晩、塩を擦り込んでいた。
パコニ夫妻は最も親切で気前の良い近所の人だった。パコニ家のドアを、中に引きずり込まれて何か食べさせてもらうことなく通り過ぎることはできず、たとえわずか10歳だとしてもワインを1杯ごちそうになった―そして、店で買ったものよりも自家製の方がなぜ優れているかについて貴重なレッスンを得たのだった。