前々回、前回と、英語が聞き取れない原因の1つである「音の変化」について解説してきました。今回は、そのまとめをお届けします。
今回も、まずは以下の英語の音声を聞いてみましょう(何度も聞いていただいて構いません)。
スクリプトは以下です。
Uluru is a top tourist draw in Australia despite its remote desert location.
単語の間にスペースがあるのだから、区切って発音してほしいと思う人もいるかもしれませんが、そこで音をつなげたり、落としたり(飲み込んだり)…といった変化をさせることで、スピードをつけて、スムーズに発音するのが英語なのです。
発音が上手な人は、英文を見た時に、ネイティブがどう発音するかを自然とイメージできます。だから、自分でも発音できますし、それでスムーズに聞きとれるのです。
先ほどの英文をもう一度ご覧ください。スピードをつけて読もうとした時に、どこをどのように変化させるか分かりますか?
Uluru is a top tourist draw in Australia despite its remote desert location.
(※以下、音がつながるところを下線、音が落ちるところは色をブルーにすることで表現します)
Uluru is a
まず、is [iz]と a [ə]がつながります。
top tourist draw
次に、topの/p/と、touristの語尾の/t/が、その後に破裂音が来ているために飲み込まれます。
in Australia
in の /n/ の音は、その後の Australia とつながります。
despite its
despiteの/t/は、その後のitsの母音とつながりますが、/t/が母音に挟まれる形となりますので、/d/に近いような音に濁ります。
remote desert location
remoteの/t/は、後に/d/という破裂音が続くので落ちます。そして、desertの/t/は、直後に/l/の音があります。/l/は破裂音ではありませんが、歯茎の裏辺りで出す音であり、/t/とほぼ同じ場所ですから、/t/は飲み込んでしまった方が言いやすくなります。
まとめますと、
Uluru is a top tourist draw in Australia despite its remote desert location.
という風に音が変化しているのです。
音声をもう一度聞いてみましょう。
また、約0.7倍速にしたゆっくり音声もどうぞ。
音の変化が苦手だという人には、音をどのように変化させればよいか(音がどのように変化しているか)をいちいち考えることがオススメです。
なお、注意点は、こういった音の変化を「ルール(規則)」だと思って暗記してしまわないことです。音が変化する理由はたった1つ、「その方が言いやすい」というだけ。誰も、規則だから変化させているわけではありません。
変化のさせ方には、地域差もありますし、個人差もあります。その時の話すスピードや区切り方によっても変わってきます。ですから大切なのは、暗記しようとするのではなく、「その方が言いやすい」としっかり感じ、納得できることなのです。
ぜひ、1つずつしっかりとテキストや音を確認していきましょう。最初は面倒くさく感じるかもしれません。しかし慣れてくると、パッと判断がつくようになります。それまでの辛抱です。
なお、音の変化を理解することは、どちらかと言えばリスニングの時に役立ちます。会話中に自分で発音する際に、無理に音を変化させる必要はありません。
それでは、音の変化に対する理解を深め、もっと慣れることのできるよう、今週も練習問題をやっていただきます。
以下の5つのフレーズ・英文で、自然に音を変化させて発音してみてください。
1. it said in a statement
まず、itの/t/が、/s/の音の直前にあります。/s/は、発音する場所が歯茎の辺りでありとても近いため、/t/が飲み込まれます。そして、said(発音は[sed]ですのでご注意ください)の/d/がその後のinとつながり、inの/n/はその後の冠詞aとくっつきます。
また、statementは発音記号で書くと[stéɪtmənt]ですが、真ん中ほどの/t/の音も、飲み込まれるケースが多いです。
・ゆっくり音声
2. one of the top positions in the European Union
one(発音記号は[wʌn])の/n/が、その後のofとつながります。なお、one of theというつながりは、会話などではof の /v/ も落ちて「ワナザ」くらいにしか聞こえなくなることもあります。この音声ではしっかりと/v/まで発音しています。
top positions のところは、/p/という破裂音が連続するため、topの/p/が飲み込まれます。また、positionsの最後の/z/の後に、inが続きますので、自然とつながりますね。
unionという単語は、つづりとしてはuの文字ですが、発音記号では[júːnjən]であり、/j/(Yの音)で始まります。その前のEuropeanが/n/で終わっていますので、くっつけて/nj/(ニュ)のような音に変化させてもOKです。
・ゆっくり音声
3. A developed country like Japan should accept more refugees
developedという単語は、元々developであり/p/で終わりますが、過去分詞になることで/t/の音が加わっています。そのためにまずは/p/の音が落ちます。そして、次に続くのがcountryの/k/という破裂音ですから、/t/も飲み込んでも構いません。今回の音声は、丁寧に発音されていますので、/t/の破裂が聞こえます。これは/k/が口の奥の方で破裂させる音のため、/t/を発音する邪魔にならないからです。
次に、likeの/k/の音は、Japanの前で飲み込まれています。should acceptの箇所は、まず、shouldの/d/が、acceptとつながっています。また、acceptの/p/は、そもそも/t/という破裂音と連続するために飲み込まれます。さらにacceptの/t/の音も、moreの前で飲み込まれています。
・ゆっくり音声
4. This time of year is when I bring out my balloons and start practicing some balloon animals and objects.
ちょっと長い文章ですが、しっかりと発音できるといいですね。
まず、timeとof、whenとI、bringとoutがつながりますね。outの/t/はmyの前で飲み込まれます。もちろん、yearとis、balloonsとandもつなげてOKなのですが、この音声では区切りのポーズが入っているため、音はつながっていません。
and startの箇所は、andの/d/がまず飲み込まれ、startの/t/も、破裂音/p/の前ですので落ちています。ちなみにpracticeという単語ですが、発音記号は[præktɪs]。/t/の前にある/k/の音は飲み込まれますね。
balloon animalsのところは、2つの単語がつながります。また、その後にandがありますので、animalsの/z/と自然とつながっています。andの/d/ですが、次がobjectsなので、母音で始まっていますが、/d/は特に発音されていません。そもそもandは、/d/を発音せずに[ən]という音だけになることが多いことをぜひ押さえておきましょう。つまり、and objectsの箇所は、andの/n/とobjectsがつながって発音されているのです。
また、objects(発音記号は[άbdʒɪkts])の/b/の音も飲み込まれます。
・ゆっくり音声
5. Not so wide that we could get sucked in though.
この英文では、飲み込む破裂音がたくさんあります。まず、notの/t/、wideの/d/(ただし、この音声では軽く発音され、区切られています)、thatの/t/、couldの/d/、getの/t/が飲み込まれるのが普通です。
また、suckedは元々/k/で終わるところに/t/の音が増えていますから、まずは/k/が飲み込まれ、残る/t/の音に、その後のinがつながるという変化が起こります。
・ゆっくり音声
さて、いかがでしたでしょうか?
「難しい」と思った方は、ぜひ分解して考えてください。それぞれの変化は決して難しくありません。1つひとつしっかりと確認・納得した上で、発音練習をしてみてください。そして、「そうやって変化させた方が言いやすい」という実感をぜひ得ていただけたらと思います。