今週の1面は、東京都知事選で現職の小池百合子氏が勝利したというニュースです。
まず、cruisedという動詞を見て「なぜここでクルーズ船の話が?」と疑問に思ってしまった人がいるかもしれないですね。cruiseは、もちろん「クルーズ船」や「航行する」という意味もありますが、cruise to + a victory/winの形で「勝利する」という意味でも使われます。勝利は勝利でも、特に「楽勝」に対して使うことが多いですよ。勝利に向かって、優雅に船を走らせている様子をイメージすると分かりやすいと思います。よって、前半は「東京都知事(Gov.)の小池百合子氏は、7月5日に行なわれた知事選(gubernatorial election)で、圧倒的な(resounding)勝利を収めた」という意味。
この後に、securingというing形が続いています。これは、本講座で何度も出てきている構造(第2回で初めて扱いました)。このように、完結した文の後に、カンマで区切って続くingは、前の文に情報を加える働きがあります。
◆ He won the election, becoming the 15th mayor of the city.
(彼は選挙で勝って、その市の第15代市長になった)
情報を「付け加える」ということは、結局andでつなぐのと大差はありません。ingの前にandを補って解釈するのがコツですよ。本文ではsecure(~を確実にする)という動詞のing形が続いています。よって「(小池氏は知事戦で勝って)そして2期目(second term)を確実なものにした」という意味です。
さて、ここではandの後にmarkingという、もう1つのing形がつながっていますね。これも前のsecuringと同じく、意味を付け加える働きをしています。ただ、このmarkという動詞の用法は要注意ですよ。以下のように使われることがあります。
markは、文字通り「マークを付ける」というのが元の意味。後ろに「始まり」「変化」「終わり」などを表す語をつなげて、「こうしたことが始まったぞ」「こうした変化が起きたぞ」「こうしたことが終わったぞ」ということを(マークを付けるように)強調する用法があると覚えておきましょう。
本文ではmarking the end of ~なので、「~が終わったぞ」ということを強調しているわけです。ちなみに、このmarkは自然な日本語に訳するのが難しいですが、いつも言っているように、訳すのが難しければ訳さなければ良いだけのこと。ここでは「~が終わったことを強調している」という本質的なことが理解できていれば100点です。これをいかに自然な日本語に置き換えるかは、理解とはまた別の話ですよ。
それでは、「何が終わった」のでしょうか? ofの後ろにはa predictable campaign held during unpredictable timesという不思議な形が続いています。predictableは「予測できる」という形容詞。動詞predict(予測する)に、「できる」を意味する-ableが付いたものですね。campaignは「選挙運動」。つまり「予測可能な選挙運動(選挙戦)」ということ。これは、どういうことか分かりますか? 皆さんもご存じの通り、事前の予測で小池氏のリードが伝えられていましたね。このpredictableは、そうしたことを意味しています。さて、campaignの後ろにheld during ~が続いています。つまり「~の間に行なわれた選挙戦」ということ。その後にはunpredictable timesとありますね。unpredictableはpredictableの反意語で「予測できない」。もう勘の鋭い方はお気づきでしょうが、ここでは「コロナに関して、先が見通せない」という意味で使われています。まとめると、
・predictable=小池氏の勝利は予想できていた
・unpredictable=コロナの今後のことは予測できない
ということをそれぞれ意味しています。例えばキャッチコピーの世界では、「世界一貧乏な男が持つ、世界一豊かな心」のように「貧乏」と「豊か」という相反する言葉を同時に使ってインパクトを出すことがありますが、それと同じく「unpredictableな時期に行なわれたpredictableな選挙」という具合に対比させていたわけですね。