今回は、芸能人たちが動画で若者に投票を呼び掛けたという記事を解説します。
まず前置詞のamongはamong young people(若者の間で)のように「~の間で」という意味が基本ですが、そこから転じて、主に〈主語 is among ~〉の形で「主語は~という大きなグループの一部だ」といったニュアンスを表すことがあります。
◆ St. Paul’s Church is among the oldest churches in the country.
(セントポール教会は、その国で最も古い教会の1つだ)
このamongは、多くの場合one ofに置き換えることができます。本文ではActors Shun Oguri and Ken Watanabe are among…なので「俳優の小栗旬さんや渡辺謙さんは・・・の中の一部だ⇒小栗旬さんや渡辺謙さんは・・・に含まれている」ということ。ここでは、この2人がcelebritiesの例として挙げられています。celebritiesの後ろにin a viral YouTube videoがあるので「拡散した(viral)YouTube動画に出演した有名人」の例として、上記の2人がこのパラグラフでは挙げられているというわけです。
viralはvirus(ウイルス)の形容詞形で「ウイルスの、ウイルス性の」というのが辞書的な意味ですが、これはしばしば「ネットで拡散している、バズっている」という意味で使われます。バズって広まる様子をウイルスに例えた表現ですね。特にgo viral(拡散する、バズる)という形で使われることが多いですよ。
◆ The photo is going viral on Twitter.
(その写真はツイッターで拡散中だ)
さて、celebrities in a viral YouTube videoの後にwhoが続いて、どんな有名人なのかを説明しています。ここではcallの用法を押さえましょう。call for Aの形で「Aを求める」という意味を表します。
◆ The group called for a ban on animal testing.
(その団体は、動物実験の禁止を求めた)
また、call for A to do ~の形になると「Aが~することを求める」という意味になります。
◆ The group called for cosmetic companies to stop animal testing.
(その団体は、化粧品会社が動物実験をやめることを求めた)
以上を踏まえて、本文を見てみましょう。ここではcalling for young people to voteなので、call for A to do ~の形が使われているのが見て取れますね。「若者に対して、間もなく行なわれる(upcoming)総選挙で投票するように呼び掛けている有名人」という意味です。
1文目の前半は「この動画『VOICE PROJECT 投票はあなたの声』は3分半ほど続いた(lasted)」ということ。その後にand showsと動詞がもう1つ続いています。ここでは、showという動詞の用法を押さえましょう。show+A+~ingの形で「(主語は)Aが~しているところを見せる」という意味を表します。特に写真やビデオを主語にして「写真・ビデオはAが~しているところを見せる⇒写真・ビデオにはAが~しているところが写っている」という意味で使われることが多いですよ。
◆ This picture shows Ted sitting in a chair.
(この写真はテッドが椅子に座っているところを示している)
◆ The video shows the man stealing from lockers.
(ビデオは、その男がロッカーから物を盗んでいるところを映している)
本文もこの構造で使われているのが分かりましたか? Aに当たるのは14 entertainers(14人の芸能人)、~ingの位置にはsharing(~を共有する)があります。つまり「この動画には14人の芸能人が自分たちの考え(thoughts)を共有するところが映し出されている」という意味を表しています。
thoughtsの後のonは分かりましたか? onには「~に関して」というaboutと似た意味の用法があります。
◆ I’m writing an essay on climate change.
(気候変動に関する小論文を書いている)
thoughts on ~で「~に関する考え」ということ。thoughts on voting and on the low interest…という具合に「~に関する」のonがandでつながれて2つ書かれています。「投票と、若者の間に広がる投票への低い関心についての考えを共有した動画」という意味でした。
2文目は「これは10月16日にアップロードされ、10月18日までに31万回以上の再生回数を獲得した(had garnered)」という意味。garnerは「~を獲得する」という動詞で、特にSNSで「いいねを獲得する」のような文脈で使われることが多いですよ。
◆ The viral video has garnered over 140,000 likes in 24 hours.
(そのバズった動画は24時間で14万のいいねを獲得した)
まずは、「~で(始まる・終える)」という場合、前置詞のwithを使って表すということを押さえておきましょう。
◆ He started his speech with a quote from Shakespeare.
(彼はシェークスピアの言葉の引用で自身のスピーチを始めた)
本文のThe video opens with…も同じように考えましょう。「その動画は・・・で始まった」ということ。その後のactor Fumi Nikaido, 27と、sayingというing形の関係は分かりましたか? 結論から言うと、これは、第6回で扱った〈ing形の主語の明示〉です。動名詞(「~すること」という意味を表すing形)の主語を明示する場合は、ing形の前に主語となる名詞・代名詞が置かれましたね。
◆ My dog isn’t used to being around strangers.
(うちの犬は、知らない人の近くにいることに慣れていない)
◆ My dog isn’t used to strangers being in the house.
(うちの犬は、知らない人が家にいるのに慣れていない)〔beingの主語はstrangers〕
2番目の文では、being in the house(家にいること)の主語はMy dogではなく、strangers(見知らぬ人)ですね。このように、文の主語とing形の主語が異なる場合などは、はっきり書いてあげないと読者に伝わりません。そこで〈主語+ing形〉という形をとるわけです。
本文でも、The video opens with saying…(その動画は・・・と言って始まった)では、誰が言ったのかが不明瞭ですね。そこで、sayingの前にactor Fumi Nikaido, 27(俳優の二階堂ふみさん〔27〕)を付けることで主語を明示している構造です。
全体は「この動画は俳優の二階堂ふみさん(27)からスタートして『これは広告でも政治活動でもありません』と語り、その後、仲野太賀さん(28)さんが『僕たちが僕たちの意思で作った動画です』と話す」という意味でした。
続く第4パラグラフでは「『私たちができる第一歩が投票』と小栗さん(38)が動画の中で話し、他方、俳優の菅田将暉さん(28)は若者の低い投票率に『驚い』て、自分もその年代だと認識していると話す」という内容が書かれています。
前半は「橋本環奈さん(22)と二階堂さんは未来の世代のために投票の重要性を強調している(underscore)」という意味。
その後の、with Hashimoto sayingという構造は分かりましたか? ここでは以下と同じwithが使われています。
◆ I can’t concentrate with kids running around me.
(子供たちが私の周りを走り回っている状態では集中できない)
過去に何度か扱っている〈with+A+B〉の構造です。withの後にA (= kids)とB (= running around me)という2つの要素を続けることで、「AがBの状態・状況で」という意味を表すことができましたね。本文では、withの後に以下の2つの要素がつながっています。
A: Hashimoto(橋本さん)
B: saying…(・・・と言っている)
つまりここは、“We must express our will,”という橋本さんの発言を紹介している箇所です。「それなら、Hashimoto said…と文章で書いた方が簡単なのでは?」と思った人がいるかもしれませんね。もちろん、それでも間違いではありませんが、そうすると短めの文章がいくつも出てくることになって見栄えがあまりよくありません。そのため、with Hashimoto saying…という文章ではない形を使って変化を持たせているのだと考えておきましょう。
というわけで、with以下は「橋本さんは『意思を示さないと』と語り、二階堂さんは自分のことを『大切にすること』に投票をなぞらえた」という意味でした。
1文目は「日本は若者の投票率(turnout)が低く、若者は概して政治から離れている(disengaged)と思われる」ということ。
2文目ではstand at ~(〔何らかの数値が〕~だ)という表現を押さえておきましょう。
◆Interest rates stand at 10 percent.
(金利は10%だ)
ちなみに、以下の例のように前置詞のat自体に「(数値が)~だ」という意味がありますよ。
◆ Ichiro holds the record for most hits in a single season at 262.
(イチローは1シーズンの安打記録を持っており、それは262本だ)
本文ではamong those aged 18 and 19 it stood at 32.28%なので、「18歳と19歳では投票率は32.28%だった」ということ。全体は「政府によると、2019年の参議院選挙では、全体の投票率は48.8%だったが、18歳と19歳では投票率は32.28%だった」という意味でした。