今週は、東海・近畿地方が史上最も早く梅雨入りしたという記事を取り上げます。
まず、partsという名詞に注目。日本語でも「パーツ」と言う通り、partは「部分、部品」「役割」「要素」「(何かの)一環」など「全体の中の一部」というのが基本イメージ。本文のように土地に対して使われると「(特定の)地域、地方」という意味を表します。
◆ This plant can be found in the north-eastern part of the U.S.
(この植物は、米国の北東部で見られる)
ここではsome western and central partsなので「西部と中部のいくつかの地域で」ということ。よって、前半は「今年の梅雨は日本列島(Japanese archipelago)の西部と中部のいくつかの地域で普段よりも数週間早く始まっている」ということ。
その後にrecord(記録する)という動詞のing形が続いています。これは英文記事の定番中の定番。このように完成した文の後に続くing形は、前の文に情報を付け加える働きがありましたね。ingの前にandを補って解釈するのがコツですよ。
◆ A bomb went off in a crowded market, wounding 15 people.
(混雑した市場で爆弾が爆発し、15人がけがをした)
本文では「(西部と中部で梅雨が例年より早く始まり)そして~を記録した」というのが大枠の意味。全体的には「統計(statistic)が入手できる(available)ようになった1951年以降、いくつかの地域(regions)では最も梅雨入りを記録した」ということです。
preliminaryは、やや難しい語ですが、これは「準備段階の、事前の、暫定的な」という意味の形容詞です。pre-(前の)という部分を見れば、何となく「まだ本番ではない、確定していない」というニュアンスがあるのが分かるのではないかと思います。
◆ He gave me a preliminary report.
(彼は私に暫定的な報告書を出した)
本文ではpreliminary figuresですから「暫定的な数字」ということ。この「暫定的」ということが、この先に出てくる、ある文を解釈する上で大切になってくるので、しっかり頭に入れておきましょう。全体は「気象庁(Meteorological Agency)によって発表された暫定的な数字によると、近畿地方――大阪府、兵庫県、京都府を含む――とその周辺の県(surrounding prefectures)は、5月16日に梅雨に入った可能性が高い」ということ。
ここは一文目の構造が難しかったと思います。図のように理解しましょう。
まずポイントは、May 31 is the earliest when schools might be able to go back to normal.(5月31日が、学校が通常の形態に戻れるかもしれない最も早いタイミングだ)と同じく、〈主語 is the earliest that/when ~〉(主語は~の時期・タイミングとして最も早い)という構造が使われているということ(本文ではthat/whenが省略されている)。そして、itがrainy season(梅雨)の言い換えであるということ。この2点が分かれば意味も見えてくるでしょう。「平均よりも21日早い梅雨の到来が、70年前に同庁(気象庁のこと)が統計をまとめ始めてから、近畿地方の梅雨入りで最も早いものだ」ということでした。
2文目のtentativeは「仮の、一時的な」という意味の形容詞。その後のif unchangedは、頻出構造ですよ。先週の第58回でも扱いましたが、while、when、ifなどの接続詞に続く<主語+be動詞>は、省略されることがありましたね。
◆ Hugo was bitten by a shark while surfing.
(ヒューゴはサーフィンをしている時にサメにかまれた)〔he wasの省略〕
◆ If used economically, one tube will last for six months.
(節約して使えば、チューブ1つが6ヵ月はもつ)〔it isの省略〕
特に、接続詞の中の主語が主節の主語と同一など、文脈上明らかな場合に省略されます。上記の例文でもHugo=heのように、省略されている主語が接続詞の外の主語と同じであることを確認しましょう(ちなみに、主語が異なっていても文脈上分かれば省略されることもあります)。また、省略されるのはbe動詞のみです。本文では、文脈的に考えてtentative start date(仮の梅雨入り日)が省略されていると見るべきでしょう。つまり「この梅雨入りの暫定日は、もし変更がなければ、1956年と2011年に出された記録を破ることになる」という意味を表しています。先述の通り、梅雨入りはあくまで「仮」です。これが「変更されなければ」という意味をif unchangedが表しているわけです。「変更されなければ」という条件付きの文なので、would breakと仮定法の形が使われている点にも注目しておきましょう。
ここではmay have enteredという形に注目。mayには「~かもしれない」という〈推量〉の用法がありますが、「~であったかもしれない」と過去のことを推量する際には、〈may+have+過去分詞〉の形が使われますよ。
◆ Jay may have got lost. It isn’t easy to find this place.
(ジェイは道に迷ったのかもしれない。ここを見つけるのは簡単ではないから)
本文ではmay have entered the rainy seasonなので「梅雨に入ったのかもしれない」ということ。全体では「愛知県を含む東海地方は、5月16日に梅雨入りした可能性があり、これまでで2番目に早く、例年よりも21日早いと、気象庁の数値(figures)が示した。東海地方で最も早い梅雨入りは、5月4日に梅雨が始まった1963年だった」という意味です。
ここでは全体の構造が〈Behind A+is+主語〉という具合に、behindという前置詞のカタマリが文頭に出ているということに気が付きましたか? いわゆる(通常の文とは語順が異なる)倒置の構造です。倒置にはいくつかのパターンがありますが、ここでは強調のために前置詞のカタマリが前に出ています。
◆ Outside the house were two convertibles.
(家の外には2台のオープンカーが止まっていた)
◆ On the table was a letter written in blue ink.
(テーブルの上には青いインクで書かれた手紙があった)
本文も同じように考えましょう。Behind the untimely start of the rainy season is+主語、という構造なので「梅雨の早過ぎる(untimely)始まりの裏にあるのは~だ」というのが大枠の意味です。これ以降、使われている単語が難しいですが、trajectoryは「軌道」、westerliesは「偏西風」、anticyclonesは「高気圧」。よって、全体は「メディアの報道によると、早過ぎる梅雨入りの背景には、太平洋高気圧に影響する偏西風の例年とは異なる軌道があるという」という意味でした。
続く第6パラグラフには「早い梅雨入りは全国で展開されつつある」という内容が書かれています。
ここでのポイントはsuggestという動詞の用法。「(人が)~を提案する」という意味がおなじみだと思いますが、そこから転じて「(データ・情報などが)~を示唆する」という意味でも使われますよ。
◆ The results of the survey suggest that many parents are concerned about sending their children to crowded classrooms.
(調査の結果は、多くの親が子どもを密になっている教室へ行かせることに不安を抱いているということを示唆している)
本文ではsuggestが2回使われていますが、どちらもこのニュアンスで解釈しましょう。「過去の統計では、早い梅雨入りでも必ずしも梅雨明けが早いわけではないことが示唆されている」という意味です。