近年、大学入試英語における出題傾向が変化している。英字新聞や洋雑誌の記事が長文読解の出典元となり、思考力や表現力を問う英作文が出題されるなどの傾向が見られるようになった。2021年度入試からの大学入試改革を見据え、今後求められる英語力とは何か。そのためにどのような学習が必要になるのか。栄光ゼミナール大学受験ナビオの酒井保人先生にお話を伺った。
2019年度入試における難関私立大学の入試問題では、新聞や雑誌の記事を出典元とする時事英語が多く出題されました。例えば、上智大学法学部では『The Japan Times』などの英字新聞の記事が長文問題に出題され、早稲田大学社会学部では海外の新聞記事を出典元とした出題がありました。こうした傾向は近年、特に社会学系統の学部でよく見られます。英字新聞や科学雑誌、経済誌などの記事が出題され、社会的な話題への関心や理解が問われるようになりました。各大学が入学後に必要とされる英語力、学力を入試の段階から受験生に示しているのです。従来のような暗記中心の受験勉強では対応できません。普段からニュースを見たり、新聞や雑誌を読んだりして時事問題を理解している受験生の方が有利になります。
小説からの出題もあります。例えば、早稲田大学国際教養学部の英作文問題では『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の一節から、ダンブルドア先生がハリー・ポッターに述べたせりふについて賛否を尋ね、受験生自身の意見を書かせました。原書を読んだり、映画を見たりしたことのある受験生は意見も述べやすかったと思います。しかし、作品に触れたことがなくても、高校では副読本などで、いろいろな英文に触れているはずです。全訳を暗記するような読み方をせず、題材に興味を持って読むように意識しましょう。
東京大学では、「新たに祝日を設けるとしたら、あなたはどのような祝日を提案したいか。その祝日の意義は何か。また、なぜそのような祝日が望ましいと考えるのか。60 ~ 80語の英語で説明しなさい」という問題が出ましたが、これは簡単にはできません。今年は天皇の退位に伴う祝日のニュースもあり、社会的な話題に対する意見を持つようにしておくことが求められます。学校の授業で自分の意見を述べたり、書いたりする機会が多い生徒は、入試がどのような形に変わろうとも、思考力や表現力が問われる問題にも抵抗なく取り組めるのではないでしょうか。生徒は教科書や参考書の太字を中心に覚える学習になりがちですが、新しい入試に対応できる学力は、受験直前期に養成されるものではなく、日々の学習のなかで身に付いていくのです。
大学受験ナビオでは、各教科の講師がその時に話題になっている事柄を取り上げては、「君はどう考える?」と問い掛けて、生徒の知的好奇心を刺激しています。日頃から周囲の大人と会話をして、多角的な視点を持つことに加え、各教科での学びを有機的に結び付けて知識として蓄えていくことも大切です。そのために、ぜひ新聞を活用しましょう。新聞には客観的な記事だけでなく、社説やコラムが載っています。記事で読んだ時事的な話題について、各社異なる論調のコメントが添えられていますから、読み比べてみましょう。それが英字新聞であれば、語彙力もつき、読む力も高められます。例えば『The Japan Times Alpha』のEasy Reading から興味のある話題を選んで読むのもよいでしょう。映画紹介のコーナーでは、日本語と英語の表現の違いに驚きもあるはずです。自分から記事を読みあさるようになるまで読んでほしいですね。
今後の大学入試では英語外部検定試験が活用されるので、計画的に取り組むことをおすすめします。一例として、高校1、2年のうちから実用英語技能検定(英検)を受験する。級に合格するだけでなくスコアの目標を設定し、4技能バランスよく学習に取り組むことが重要です。目標スコアが取れたら、次のステップとして上の級や他の検定試験を受験する。次第に、このスコアならどの大学に合格できるという目安が具体的に見えてきます。4技能をバランスよく身に付けて、戦略的に志望大学合格に近付きましょう。