「高校時代に留学した方がよい」と考えている企業の人事担当者が、全体の68%に及ぶという調査報告がある。感性が豊かな高校生のうちに留学を経験することで、幅広い視野や自立心が養われるのだ。
文部科学省と民間企業・団体が官民協働で実施する「トビタテ!留学JAPAN」でプロジェクトディレクターを務める船橋力氏に、高校生が留学することの意義と、プロジェクトの詳細を伺った。
「世界が大きく変わる中、日本の存在感が薄れてきていることに、多くの人が危機感を抱いています。特に、海外の若者と比較した場合、日本人は語学力・情報収集力・ディベート力といった面で、大きく遅れをとっています」と、文部科学省官民協働留学創出プロジェクトディレクターの船橋力氏は言う。本プロジェクトは、留学を志す高校生・大学生らに返済不要の奨学金を支給し、将来グローバルリーダーとしての活躍が期待される人材を育てようとするものだ。
「成績や語学力はあえて不問とし、意欲や熱意・好奇心を選考の基準とします。『大人になってから』というのでは遅い、1日も早く多くの若者に海外へ飛び立ってほしいという願いから始まりました」。
文部科学省の調査によると、「留学したい」と考えている日本の高校生は全体の40%、しかし高校在学中に実現できているのは、1%程度に留まるという。主な原因は経済的理由。授業料だけではなく渡航費・生活費等、一般家庭にとっては大きな負担となる。
「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」では、大学生1人に平均150万円(平均滞在期間9ヵ月)、高校生1人に平均50万円(平均滞在期間1ヵ月)の返済不要の奨学金を支給しているそうだ。「応募者が自分で計画を立てる」「目的は語学研修や現地高校・大学への留学に限らず、インターンシップやボランティアを留学とすることも可」「成績や語学力は問わない」という自由な制度を実現するために、税金は使わず、民間からの寄附で、2020年までに200億円を集め1万人を派遣する予定である。
「私たちの調査で、企業の人事担当者の68%が、『高校時代に留学した方がよい』と考えていることが分かりました。プロジェクトの主旨に賛同してくれる企業の方は多く、応募者の審査にも参加するなど、積極的に携わってもらっています」。現在までに、233の企業・団体から約116.8億円の寄附金が集まっている。
既に高校生と大学生約6,000名を輩出した同プログラムであるが、2020年までに1万人の留学生を輩出するためにはまだ必要な資金が不足しており、引き続き寄附を受け付けている。
現在は法人からの寄附のみならず、個人からの支援も受け付けている。個人の寄附者は、留学を応援する日本代表サポーターとしてメールマガジンや活動報告レターによって、留学生の活躍ぶりに随時触れることができ、また帰国後の成果報告会に参加することで、留学体験談を直に聞くことができるのも、寄附者にとっては貴重な機会となっている。寄附金には税制上の優遇措置があるほか、500万円以上の寄附者には、公益に対して私財を寄附した功績がある人に与えられる「紺綬褒章」に推薦され、すでに数名の受章者が出ているそうだ。
さらに同プログラムの特徴は、参加者は単に個人の能力を伸ばすだけでなく、留学先で「アンバサダー(大使)」として日本文化の良さを現地に伝え、帰国後は「エヴァンジェリスト(伝道師)」として、留学意義を伝える活動をする義務があることだ。自分の考えや経験をきちんと言葉にして発信することができるよう、事前研修によって現地での活動計画を明確に立て、事後研修で留学の成果を整理する。
これまで留学に出発した高校生の中には、オーストラリアのシドニーでオリンピック施設の調査をしつつ、日本の風景・食・建築に関する英文パンフレットを制作して配布するといったアンバサダー活動をした生徒がいるそうだ。
「私たちの方から、『この国でこれをやってきてほしい』という依頼をすることはありません。すべて応募者が自分で企画します。これまでに留学した高校生の行き先は欧米を中心にアジア、オセアニア、中南米そしてアフリカまで、世界71ヵ国にものぼります。高校生のうちに自分が生活している国とは異なる世界に触れることで、社会に関する問題意識が大きく変わり、大学進学や将来の就職について、明確な目標を持つようになります」。
ディレクターの船橋氏自身、幼少期をアルゼンチン、高校3年間をブラジルで過ごし、そのときの経験が今の仕事に大きく生かされているという。
「アルゼンチンでは日本人はマイノリティーで、日本という国がどこにあるか知らない人も大勢いました。ブラジルはまさに人種のるつぼで、髪の色や肌の色が違うことなんて、誰も気にしません。言葉や見た目が違っても、結局『人は皆同じ』と考えるようになりました」。
また、留学により、「世界から見た日本」を常に意識するようになる。
「日本は安定した安全な国ですが、これからもそうであり続けるとは限りません。若者たちに今のうちに、人生には多様な選択肢があり、 それを自分で選べるということを知ってほしい。外の世界に出ることで、日本の良さに改めて気づくこともできると思います」。
激動の時代を生きる若者をオールジャパンで留学に送り出す国家プロジェクト。本プロジェクトが育む1万人の若者が日本の未来をどのように変えていくのか、今後ますます目が離せない。
船橋 力(ふなばし ちから)
上智大学経済学部卒業。世界経済フォーラムYoung Global Leader 2009メンバー。現在は文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクトディレクターを務める。
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場所:文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2)
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