今回の1面は日本でワクチン接種が始まったという記事です。
まずはワクチン関係の語句を整理しましょう。
・vaccine(名)ワクチン
・vaccination(名)ワクチン接種
・vaccinate(動)~にワクチンを接種する
・vaccinated(形)ワクチン接種を受けた
これらは、ワクチン関連の記事には頻出ですよ。しっかり押さえておきましょう。
冒頭は「日本は2月17日、COVID-19のワクチン接種を始めた」ということ。その後に、カンマで区切ってstartingというing形が続いています。これは過去に何度も扱った構造ですね。完成した文の後に続くing形は、前の文に情報を付け加える働きがあります。ingの前にandを補って解釈するのがコツですよ。
◆A bomb went off in a crowded market, wounding 15 people.
(混雑した市場で爆弾が爆発し、15人がけがをした)
本文ではstartingなので、「(そして)始めた」と解釈しましょう。
また、ここでは後ろのwithにも注目。withは、cut it with a knife(それをナイフできる)のように〈道具〉を表す用法がありますが、そこから転じて以下のように「~で(始める、終わる・・・)」のような用法がありますよ(これらもある意味「~を使って」と考えることができます)。
◆Oliver started his speech with a quote from Shakespeare.
(オリバーはシェークスピアの引用でスピーチを始めた)
◆She welcomed us with warm hugs.
(彼女は温かいハグで私たちを迎えてくれた)
ここではstarting with an initial group of 40,000 health workersなので、「最初の(initial)グループである4万人の医療従事者で(ワクチン接種を)始めた」ということ。
以降は「高齢者と基礎疾患(preexisting conditions)のある人々に接種(inoculation)プログラムを拡大する(expanding)前に」という内容が続いています。inoculationは難しい語ですが、ここではvaccinationとほぼ同じ意味だと考えておきましょう。
まずflu shot(インフルエンザの予防接種)のように、「注射、予防接種」の意味があることを確認しておきましょう。また、runには「~を運営する」という意味があり、state-runで「国営の」。英文記事ではChina’s state-run news agency Xinhua(中国国営通信社の新華社)のような形でお目にかかることが多いですよ。冒頭は「最初の注射は、東京にある国立の病院で打たれた」ということ。
さて、ポイントになるのは、その先のwithです。これを見て「あれだ!」と気付くことができましたか? 過去に何度か扱っていますが(初出は第4回)、〈with A B〉のように、withの後ろに何らかの2つの要素を続けて「AがBであるという状態・状況で」ということを描写する働きがありましたね。
◆Don’t speak with your mouth (=A) full (=B:形容詞).
(口が〔食べ物で〕いっぱいの状態でしゃべるな)
◆I always sleep with the window (=A) closed (=B:過去分詞).
(いつも窓を閉めて寝ている)
本文でも、これと同じ形が使われていると気付くことが第一歩です。
もう1つのポイントはdueという語の用法。dueは「~する予定である」という意味の形容詞です。due to do ~で「~することになっている」(〈理由〉を表す〈due to+名詞〉と区別しましょう)。due dateなら「(出産などの)予定日」です。
◆The panda is due to arrive at the zoo today.
(パンダは今日、動物園に到着することになっている)
本文では、上のwith your mouth fullと同じく、Bの位置にdue to ~という形容詞が置かれて、「ワクチン接種(=A)が、~する予定である(=B)という状況で」という構造になっていると理解しましょう。「ワクチン接種は日本各地の100ヵ所の医療施設で翌週までに行なわれる予定となっている状況だ」という意味です。ちなみに、この部分と前の文(「最初の注射は、東京の国立の病院で打たれた」)をどんな日本語で接続するのが自然か、なんてことを考えてはいけませんよ。「ワクチン接種は日本各地100ヵ所の医療施設で翌週までに始まる予定」という状況が読み取れていれば十分。それをどんな日本語にするかは、理解とは全く関係のないことです。
最後の文は「ワクチンはアメリカの医薬品メーカーのファイザーとドイツのBioNTechによって開発された」という意味です。
ここでも、第1パラグラフと同様に、前の文に情報を付け加えるing形(starting)が使われていることに注目しておきましょう。「日本はワクチン接種プログラムの開始が比較的(relatively)遅く、少なくとも70の他国よりも遅く開始した」という意味です。
ここでのポイントは、comeの用法。第17回で扱いましたが、comeは後ろに「状況・タイミングを表す語句」(※after〔~の後〕、amid〔~のさなか〕、when〔~の時〕、at a time ~〔~の時に〕など)が続いて、「(主語は)~という状況・タイミングで起きた」という意味を表す用法があります。
◆The agreement came after several days of negotiations.
(その合意は、何日間にもわたる交渉の末に達成された)
◆Hitler’s rise to power came at a time when millions of people were unemployed because of the Great Depression.
(ヒトラーが政権に就いたのは世界恐慌で数百万の人々が失業していた中でのことだった)
このように、「どのようなタイミングで主語が起きたのか」を伝えるのが、このcomeのポイントです。本文のwith less than six months to go until the Tokyo Olympics and Paralympics(東京五輪・パラリンピックまで6ヵ月もない)というのも、「タイミング」を表す表現ですね。よって、このcomesも「どのようなタイミングで主語が起きたのか」を意味しています。「ワクチン接種の開始は、東京五輪・パラリンピックまで6ヵ月切るという状況の中で起きたことだ」ということ。
さて、ここではandでつながれてas ~が続いています。ここでは文脈的に〈時〉を表すasです。ということは、これもある意味「タイミング」ですね。つまり、このような構造になっているわけです。
このように、comeに続く「タイミング」を表す要素が、andでつながれて2つ使われているという構造でした。後半のas以下は「感染拡大に対する対応の遅い(sluggish)ことへの非難から菅義偉首相の支持率が下がっている中で」という意味です。
前半は「医療関係者の最初のグループのうちの2万人が、副反応(side effects)を観察するための研究に参加する(participate in)」ということ。side effectsにpotentially caused by the vaccineという修飾要素がつながっています。「ワクチンによって引き起こされる可能性がある(potentially)副反応」という意味です。
その後、the frequency(頻度)の後にwith whichという形が続いています。こうした〈前置詞+関係代名詞〉の形を見ると逃げ出したくなるほど苦手にしている人がいますが、それほど難しくはありません。なぜその前置詞が使われているかを考えれば、意味が見えてきますよ。この場合はthey occur with … frequency(それら〔=副反応〕が・・・の頻度で起きる)のように、「~の頻度で」を表すにはwith … frequencyという形が使われるから、というだけの理由。すなわちthe frequency with which they occurは「副反応が起こる頻度」ということ。「ワクチンによって引き起こされる可能性がある副反応と、その頻度を調べる研究に、ワクチンを最初に打ったグループが協力する」という内容を表しています。
「彼らは接種2回のうちの1回目を受けた後の7週間、日々の記録をつけるよう求められる。接種は3週間の間をおいて実施される」という第6パラグラフに続く、最終パラグラフを見ていきましょう。
ここでのポイントはare to beginという構造。このように〈be動詞+to do ~〉は「~する予定になっている」「~しなければならない」「もし~するつもりであれば」など、文脈によって様々な意味になりますが、基本的には「(これから)~すること」を表す際に使われると解釈しておきましょう(それが文脈に応じて、いろいろな意味になるだけです)。
◆They are to be married in June.
(彼らは6月に結婚することになっている)
◆You are to stay here until I come back.
(私が戻るまで、君はここにいなければならない)
本文は「さらに370万人の第一線で働く医療関係者が3月にワクチンを受け始める予定である」という意味です。
その後のfollowed by ~にも注意しましょう。followは「~に続く」なので、これは直訳すると「~によって続かれる」。ただ、この日本語で理解しようとしても混乱するだけなので、このfollowed by ~は「後に続くものを示す」役割で使われると覚えておきましょう。本文は「その後、65歳以上の人々3600万人が4月に接種を開始する」という意味です。