今週も1面記事の中の疑問点を解消し、読解のポイントを学んでいきましょう。今回は、五輪の海外客受け入れ断念という記事です。
まず、allowという動詞に注目。英文の構造を捉える力を磨くには、動詞の用法に精通することが大切ですよ。allowは〈allow+A+to do ~〉の形で「Aが~することを許す、可能にする」という意味。これが受身になった〈A is allowed to do ~〉(Aは~することを許される)というパターンもしっかり押さえておきましょう。
◆They don’t allow you to smoke in the lobby.
(彼らはあなたがロビーで喫煙することを許していない)
◆You are not allowed to smoke in the lobby.
(あなたはロビーでの喫煙を許可されていない)
本文ではallowが受身で使われていますね。よって、「今年の夏の五輪・パラリンピックのために、海外客(International spectators)は日本への入国が許されない」という意味です。
その後のamidにも注目。これは「~という状況がある中」という意味で、主に〈背景説明〉をするために使われる前置詞です。
◆The minister resigned amid sexual harassment claims.
(セクハラの申し立てを受ける中、その大臣は辞任した)
本文では後ろにconcerns(懸念)が続いているので「懸念がある中で」という意味を表しています。concernsの後ろのoverも重要ですよ。overには、debate over ~(~をめぐる論争)、concern over ~(~をめぐる懸念)のように、主に論争やマイナスイメージを表す語と結びついて、「~をめぐる」という意味で用いる用法があります。
◆There’s been some debate over how to use the land.
(その土地の使い道をめぐって論争が起きている)
ここでは、concerns over the coronavirusなので、「コロナウイルスをめぐる懸念」。つまり前半は「新型コロナウイルスをめぐる懸念の中、今年の夏の五輪・パラリンピックで、海外客は日本への入国が許されないと、組織委員会が3月20日に発表した」という意味です。
その後にcrushingとsettingという2つのing形が、andでつながれて続いています。これはほぼ毎回扱っている「文末のing形」の構造ですね。完成した文の後に続くing形は、前の文に情報を付け加える働きがあります。ingの前にandを補って解釈するのがコツですよ。
◆A bomb went off in a crowded market, wounding 15 people.
(混雑した市場で爆弾が爆発し、15人がけがをした)
本文では、「(「海外客が入国できない」という話を受けて)そして、多くのファンの期待を打ち砕き(crushing)、規模を大幅に縮小した(drastically scaled-back)大会への土台を作った(setting the stage)」という意味を表しています。
まず、someは「いくつかの」という意味で使うことが多いですが、以下の用法も押さえておきましょう。
・〈some+数字〉:「約~」(=about)
・〈some+単数名詞〉:「ある、何らかの~」
本文では「約60万」ということ。文の前半は「海外在住者が購入した約60万枚の五輪のチケットが払い戻される(be refunded)」という意味を表しています。
難しいのは、as will…という構造ですよね。以下の文法項目を押さえましょう。
“I’m sad.” “So am I.”(「私は悲しい」「私もだ」)のSo am I. は、I am so.(私もそうだ=悲しい)を倒置したものだと考えておこう。このように〈so+be動詞/do/will…+主語〉の形で、「(前の内容を受けて)主語も~だ」という意味を表す。一般動詞の文ならSo do I.、過去形であればSo did I.、主語が3人称単数ならSo does he.、助動詞が使われる場合はSo will I. のように、soの後ろに入る語には、主語や時制などによって変わる。
◆“He was tired.” “So were we.”
(「彼は疲れていたんだ」「私たちだって疲れていた」)
◆He knows how to cook, but so does his wife.
(彼は料理の仕方を心得ているが、それは彼の妻も同じだ)
◆“John can really sing.” “So can I.”
(「ジョンは本当に歌がうまい」「私だってうまいよ」)
このようにsoを使うのが一般的ですが、まれにsoの代わりにasが使われることがあります。それが本文の形です。as will…は、「海外在住者が購入した約60万枚の五輪のチケットが払い戻されるし、さらに(another)3万枚のパラリンピックのチケットもそうだ(=同じように払い戻される)」という意味を表しています。以上のことを「2020年東京オリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長が記者会見で述べた」と書かれています。
第3パラグラフには「彼は、払い戻しにいくら費用がかかるかを話すことは控えた」という内容が書かれています。
「オリパラは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、昨年延期された(be postponed)」に続く2文目に注目。Whileで始まっていますね。whileは「~する間、(その裏で)・・・」という意味が基本ですが、そこから転じて「~の一方で・・・」という前後を〈対比〉する意味で用いることも多いですよ。
◆While some people think the joke is funny, others find it very offensive.
(そのジョークを面白いと思う人がいる一方、それを非常に不快だと思う人も入る)
本文では「感染拡大(outbreak)でオリンピックに対する世論の熱意を削いでいる(chilled)一方で、組織委員会と菅義偉首相は開催に向けて準備を進める(press ahead)ことを誓った」という意味を表しています。
さて、難しいのはwith the Olympics…のところではないでしょうか。これは、以下と同じ構造であることを見抜けましたか?
◆She always sleeps with the window (=A) closed (=B).
(彼女はいつも窓を閉めて眠る)
これは第4回で扱った〈with+A+B〉の構造です。withの後にAとBという2つの要素を続けることで、「AがBの状態・状況で」という意味を表すことができましたね。本文では、AとBに当たるものはそれぞれ何か? 以下に整理しましょう。
・A: the Olympics(五輪)
・B: scheduled to take place on July 23-Aug. 8(7月23日から8月8日まで開催される予定になっている)
というわけで、「五輪が7月23日から8月8日まで開催される予定であるという状況で」という具合に、五輪の開催予定スケジュールを伝えているというわけです。
その後のfollowed byにも注意。これは第49回でも扱いましたが、「~によって続かれている」というのが直訳。ただし、このように日本語で捉えていると「結局、どっちが先でどっちが後なの?」と混乱してしまいがちです。そこで、この表現は「後に続くものを示す」と捉えるのが、素早く理解するコツですよ。
◆The presentation will be followed by a panel discussion.
(そのプレゼンテーションに続いて、パネルディスカッションが行なわれる)〔プレゼンテーション⇒パネルディスカッション〕
本文では「(五輪に続いて)パラリンピックが8月24日から9月5日まで行なわれる」という意味を表しています。
まず、onには「~に関する」という意味を表す用法があります。The decision on international spectatorsは「海外客に関するその決断(=受け入れ断念)は」ということ。その後「『すべての参加者と日本の国民にとって、安全でしっかりとしたオリンピックとパラリンピックを確実にする(ensure)』と、2020年東京オリンピック組織委員会は声明(statement)で述べた」と続いています。
ここでは、statementの後のfollowingに注目。これはfollowed by ~の逆で「~に続く」という意味。ただ、これも日本語で捉えていると混乱するので、followingはafter(~の後)と同じ意味だと捉えておきましょう。
◆A panel discussion will be held following the presentation.
(そのプレゼンテーションの後に、パネルディスカッションが行なわれる)〔プレゼンテーション⇒パネルディスカッション〕
本文では「国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ委員長と、東京都の小池百合子知事を含めた会談の後に出された声明」という意味で使われています。
ここではin some wayに注目。前述の通り、〈some+単数名詞〉で「何らかの~」という意味を表します。ここでは「何らかの方法」ということ。whereasは、whileと同じく「~である一方」という〈対比〉を表します。先ほどのwhileと意味はほぼ同じですが、whereasの方が堅い語であること。whileが「~する間」など幅広く使われる一方、whereasは「~である一方」と〈対比〉の意味でしか原則として用いない、ということを覚えておきましょう。
全体は「『何らかの形でオリンピックに関わっている人々は日本への入国が許可されるかもしれないが、通常の来場者は入国できない』と、2020年東京オリンピック組織委員会の武藤氏は述べた」という意味。able toの後にenter the countryが(繰り返しを避けるために)省略されているという点にも注目しておきましょう。