ドナルド・トランプ氏が共和党の予備選挙に勝ちジョー・バイデン氏が民主党の現職の大統領であることから、私たちはアメリカの大統領選挙の再対決を迎えようとしているように思える。このシナリオは約70年ぶりだ;最後の再対決はドワイト・D・アイゼンハワー氏とアドレー・スティーブンソン氏の間で1956年に行なわれた。
心配しないでもらいたいが、トランプ氏とバイデン氏がしていること以上のものを提供する2人の候補者をアメリカほどの先進国が見つけられないということに驚きを表していることは別として、私はこのコラムで政治討論を引き起こすつもりはない。
私はアメリカで投票できないが、自宅よりも法廷で過ごす時間が多いように見える男と、命の危機に瀕しているように見える年寄りのような81歳の人よりももっと考慮に値する候補者はきっといるはずだ。
11月の大統領選挙日までに、トランプ氏は刑務所に入っているかもしれないし、バイデン氏はもう私たちの元にいないかもしれない。そんなことがあってはならないが!
選挙戦全体が年月が過ぎるにつれて変化してきた。過去には、大統領候補討論会は非常に重要なものだった。討論がうまくいけば、候補者は選挙の大きな勢いに乗ることができた。最近では、討論会は以前ほどのインパクトがないように見える―トランプ氏は共和党の討論会を欠席すらして、それでも簡単に勝つことが確実視されているようだ。
選挙資金はかつてはテレビのコマーシャルに使われてきたが、最近ではソーシャルメディアプラットフォームの方がより威力を振るう。テレビのチャンネルは左派と右派の線引に沿ってもっぱら分断されているように見える―CNNは左派で、Foxは右派で、他はその中間だ。もしあなたが民主党支持者ならば、あなたはCNNの報道を見るだろうし、もしあなたが共和党支持者ならばFoxの報道を見るだろう。どちらのニュース報道機関も視聴率を維持するために、視聴者が見たくて聞きたいことを放送することで、視聴者の偏った見方を強める役目を果たしている。例えば、Foxがバイデン氏のインタビューを放送したとしたら、視聴率は下がり、Foxの広告主は憤慨するだろう。
アメリカのメディア組織は事実上、プロパガンダマシンに成り変わってきた。私はそれについて彼らを批判しているのではなく、ただそういう成り行きになっているということだ。金がものをいい、視聴者と広告主を引き付けて、支払いを済ませるために、彼らがする必要のあることを彼らはしなければならないのだ。投票者が正確で公平な情報に基づいて客観的な判断を下すのは、とても難しくなってきている。
ところで、私たちはなぜ、アメリカの選挙をこんなに気にかけるのだろうか? 私は遠く離れた南アフリカにいて、これを読んでいる皆さんのほとんどは日本にいるが、それでも、世界は誰がアメリカの大統領になるのかに夢中になっているように見える。彼らの政権の政策は、私たちのそれぞれの国々にとって形勢を一変させるものになるとは考えにくいが、それでも私たちのほとんどは、アメリカの選挙のことを自分の国の選挙よりももっと注視して追いかけている。
少なくとも、この再対決が前回の対決よりも少し穏やかであることを願おう。