知らない番号からの電話にあなたは出るだろうか?
私はあまりためらわずにそうしていた。仕事上、たくさんの広告会社が私の電話番号を知っていて、ストーリーを売り込むための電話かもしれないからだ。
もちろん、その番号が怪しげで詐欺の電話の可能性があれば無視する。こうした電話は、海外の局番がついた番号である傾向があるが、詐欺師たちがシンガポールの国番号の+65が付いて表示される番号をまね始めて以来、知らない番号には国番号が全くないときだけ私は電話に出る。
数週間前、私の携帯電話の画面が、一見本物の地元の携帯電話番号に見える番号からの着信で光った。国番号はなかった。
「イン・ツェンさん、こんにちは! 久しぶり! どうしてた?」 電話をかけてきた人はマレーシア訛りの標準中国語で話し、彼は私の名前―私を知らない人はよく発音を誤る―を、友人や家族が呼ぶのと同じように発音した。
私は彼が誰なのか分からなかった。「すみません、どちらさまですか?」
「おいおい! 携帯の番号を変えただけで、僕のこと忘れちゃったの?」
私は頭をひねった。少しきまりが悪かった。私の記憶は昔ほどよくはなく、特に名前を覚えるのが苦手だ。しかし、彼の声には全く聞き覚えがなかった。マレーシアの友人は何人かいるが、彼らの誰もこの人物のような声ではない。
「僕のこと覚えてないなんて信じられないや! 僕の名前を当てるチャンスをいくつか出すよ」。
たくさん食べた後の眠気のせいだったかもしれないが、何も思い付かなかった。「すみません。あなたが誰なのか分かりません。お名前をテキストメッセージで送ってもらえれば、あなたの電話番号を登録しておきます」。
こうしてその電話は終わった。そして、気づいた。詐欺だったのだ。
友人がしばらく前に同じような電話を受けた。彼女は誤って電話をかけてきた相手を「ボブ」だと認識し、詐欺師がしがみつく名前をうっかり与えてしまった。数日後、彼は電話をかけてきて、送金して助けてほしいと頼んできた。運よく、友人の銀行アプリがダウンしていて、送金するにはATMに行くしかなかった。ATMへ行く途中で、彼女は何かがおかしいと気付いた。
詐欺師たちが私たちの名前と電話番号をどうやって入手するのか分からない。しかし、彼らは私たちを騙す新しい方法を考案し続けると言って間違いないと思う。最近リスボンで行なわれたグローバル・アンチ・スキャム・サミットで、詐欺師たちは、2022年8月から2023年8月までの間に世界で推定1兆200億ドル(153兆円)を盗み取り、シンガポールの被害者は1人当たりの失った金額が最も多かったことが明らかになった。
大変かもしれないが、私たちは絶対に能力を磨かなければならない。警戒し続けることに加え、おそらく、私たちは経験したことを共有すべきでもある。人々が詐欺師の手口を知れば知るほどに、だまされる可能性は低くなるだろう。