どう頑張っても、私にはラブブの魅力がどうしても理解できない。ラブブは、毛で覆われていて、歯がぎざぎざのうさぎのようなキャラクターだ。
ラブブは2015年に香港生まれのアーティスト、カシン・ロン氏によって、北欧のおとぎ話に着想を得た物語のシリーズ『ザ・モンスターズ』の一部として作られた。キャラクターたちは エルフや妖精、モンスターをモデルにしている。
2019年に、中国のおもちゃメーカー「ポップ・マート」は、これらのキャラクターを基にした商品を販売する独占的なライセンス契約をロン氏と結んだ。現在、ぬいぐるみやバッグチャーム、中が見えない箱入りのフィギュアが入手でき、このうち、最も人気があるのはラブブのようだ。
ラブブが人気の理由の1つは? タイの歌手でブラックピンクのメンバーであるリサさんが自身のインスタグラムのストーリーズに、自分の姿と一緒にラブブのぬいぐるみとチャームを4月に投稿していた。ファンたちはラブブを手に入れるために奔走し、突然みんながラブブを欲しがった。
ラブブがニュース記事に現れ始めた最近まで、私はラブブのことに気付いていなかった。シンガポールのある学生は、買い物に出かけている間に、彼女のラブブのおもちゃを盗まれた。それは彼女のカバンに付けられていた。
その少し後に私は、カバンに付けているラブブに鍵をかけている人たちのことについて読んだ。例えば、ある女性はねじ留め具の付いたキーチェーンを使っていた。私はこのことをむしろばかげたことだと思った。なぜなら、カフェでかばんやノートパソコンをカフェで誰も見張っていない状態にして置いていく人を見かけるからだ。
私よりも若い同僚は、グラインドボックスフィギュアのコレクターで、ラブブのおもちゃを入手するのは難しいのだと説明した。店では売り切れていて、転売価格は高騰していた。もともと20シンガポールドル(2,300円)以下で売られていたブラインドボックスフィギュアは、100ドル(1万1,500円)以上することもある。人々は需要に乗じて値段を吊り上げてきた。
ラブブの商品を「キャッチする」運を試すことができるクレーンゲームの店に集まったファンもいる。ネット上で急速に広まった話で、ある41歳のコンサルタント業の男性がコレクションを集めるのに1ヵ月で1万ドル(1,150万円)近く使ったと話していた。彼は、仕事のストレスを軽減するために、クレーンゲームのマシーンに毎日数百ドル使っている。彼はキャッチしたものをすべて、インターネット上で売る。
しかし、私はラブブの魅力を理解するのに苦しむ。「かわいくない」と私は同僚に話した。
同僚は、ラブブはアバターのようなものだと辛抱強く説明した。ポーズとルックスが違うタイプがたくさんあり、誰もが親しみを感じられるラブブがある。それに、ブラインドボックスはスリル感と満足感を与える。
「欲しいラブブを手に入れると、うれしさと、認められている感覚と、見られている感覚が得られる」。
別の友人は、姉妹にラブブをもらうまでは、ラブブに夢中ではなかったと話していた。ラブブは彼女に子どもの頃の人形を思い起こさせるといい、彼女は今、ラブブをさまざまな衣装で着飾るのを楽しんでいる。
ラブブを手に入れることが中毒の始まりなら、私は誰からももらわないことを望む。