時事キーワード
Alphaを読んだり、今話題になっていることについて英語で話すときに知っておきたいキーワード集。
ジャパンタイムズ元記者が英語の用法やニュースの背景を解説します。随時新しい用語も追加されます。
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行き詰まり standstill
2024年5月、イスラエルとハマスの戦闘が続く中で、イスラエルはガザ地区南部の都市ラファへの攻勢を強めた。空爆や地上部隊による軍事作戦が続く一方で、停戦交渉の先行きは見えないままだ。 standstillは2つの成分から構成される。stand(立つ)+still(じっと動かない)であることから、standstillは「じっと立ったままで動かない状態、完全に止まった状態」を指す。ここから「行き詰まり、停滞、膠着状態」などの意味になる。文字通りの「完全な停止」の意味でも使うが、論争、議論、交渉の話題では「行き詰まり」として使う場合がほとんどだ。 standstillは、come to a standstill(停止する、〔交渉が〕行き詰まる、〔交通機関が〕まひする)というフレーズでもよく使われる。その一方で、at a standstill(停止した、行き詰まった)を補語として使うことも多い。(be / remain) at a standstillという形が頻出だ。
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オスプレイ Osprey
2023年11月、米空軍横田基地に所属するCV-22オスプレイが鹿児島県の屋久島沖で墜落し、乗員8名が死亡、日本では初めてのオスプレイの死亡事故となった。一方、本国アメリカでは、オスプレイの生産を2026年で終了すると報道された。機体の不具合や事故の多発などで、調達数が伸びなかったことが影響したともされる。
米軍機には、型式とは別に鳥などの名前にちなんだnickname(愛称、ニックネーム)が与えられることをご存じだろうか? Ospreyの意味は「ミサゴ」で、主に魚を餌とし、 水面上で旋回や往復して獲物を捕えるのが特徴だ。オスプレイの飛行する様がミサゴの行動に似ていることからきている。
同様に、F-22戦闘機はRaptor(ラプター〔猛禽類〕)、F/A-18戦闘機はHornet(ホーネット〔スズメバチ〕)、F-117偵察機はNighthawk「ナイトホーク〔夜鷹〕)の愛称を持つ。ちなみに、nighthawkには「夜に活動する者、夜遊び人」の意味もある。 -
戒厳令 martial law
2024年12月、韓国の政治が大いに混乱した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳」と呼ばれる戒厳令を宣言し、一時的に行政や司法の機能を掌握できる状況が発生した。北朝鮮による破壊工作を防ぐためだったというが、大統領の超法規的措置をめぐって弾劾を求める動きが起こり、国会は2度目の投票で弾劾案を可決した。大統領は弾劾の有効性を争う構えで、引き続き韓国の政治状況からは目が離せない。
英語で「戒厳令」はmartial lawだ。martialは「軍の、戦争の」という形容詞で、martial lawは「軍事の法」を指す。非常事態に即応できる利点はあるが、その強権的な手法は民主的な手続をスキップする深刻な弊害を生む。
軍事に関連して、martialには「武術の」という意味もある。ここからmartial arts(武術、格闘技)というフレーズが理解できるだろう。なお、「格闘技」はcombat sportsとも呼ばれるが、こちらは競技としての側面に重点を置くフレーズで、martial artsは伝統に基づいた規律や精神を重んじる側面がある。 -
君主制 monarchy
2022年9月、イギリスのエリザベス女王が死去し、ロンドンのウェストミンスター寺院で国葬が営まれた。monarchは「君主、国王」で、国の統治権を有する一人の支配者を意味する。これを基本にする統治システムをmonarchy(君主制、君主制国)と呼ぶ。monoで始まる単語の多くが「一つの、単一の」という意味を含むことからも理解できるだろう。
形式的とはいえ、イギリスが今もなおmonarchyの国であることを思い知らされる。なお、世界中が女王の死を追悼した一方で、かつて植民地だったイギリス連邦の一部の国は、民衆が主権を有するrepublic(共和制)への移行を模索している。 -
軍事演習 military exercise
東アジアでは軍事的緊張が高まっていてる。例えば、日米韓による軍事演習が行なわれる時期に合わせて、北朝鮮はしばしばミサイルや核実験によるけん制と挑発を繰り返してきた。
exerciseの基本的な意味は「使うこと」であり、ここから「行使、発動、発揮、訓練、演習」などの意味に派生する。また、身体を動かせば「運動、エクササイズ」になる。演習ではなく実際に相手を攻撃する意味での「軍事力の行使、発動」は、exercise of military muscleなどと表現する。
「軍事演習」にはmilitary drillという表現もよく使う。drillには「訓練、練習」という意味があり、勉強の「ドリル」から軍事演習まで幅広く使われる単語だ。 -
経済制裁 economic sanctions
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、西側諸国は対ロシア経済制裁を発動した。sanctionの代表的な意味は「制裁」であり、「経済制裁」は通例複数形でeconomic sanctionsとなる。
sanctionの基本的な意味をたどれば「お墨付きを与えること」である。「制裁」の他にも「認可、拘束力、是認」などの意味があるが、いずれも法的、社会的、あるいは慣習的なお墨付きを与えることだ。また、動詞では「正当と認める、認可する」などの意味になる。
言い換えれば、「制裁」とは意図的に相手に不利益を与える措置であるために、何らかの正当性がなければ成し得ないものなのだ。 -
人道回廊 humanitarian corridor
2023年11月現在、パレスチナのガザ地区でイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘が続いている。10月にハマスがイスラエルにテロ攻撃を行なったことが発端となった。ハマスがイスラエルの人質を拘束し、一部は解放されたが、イスラエルによるガザ地区への攻撃で人道状況は悪化し続けている。
「人道回廊」はhumanitarian corridorと表現される。人道的な観点から、子供を含む民間人などの非戦闘員を戦火から退避させるために設置される避難経路を指す。人道回廊の実現には、戦闘の当事者による停戦合意が欠かせないが、ハマスとイスラエルの間で長期的な停戦の見通しは立っていない。
corridorといえば、まず建物の「廊下」を思い浮かべるかもしれないが、地政学的にhumanitarian corridorは、領土から伸びる「廊下のような細長い土地」を指す。このニュースでは、戦場と安全な場所を結ぶ通路といったニュアンスになる。 -
戦略兵器削減条約 START
ロシアによるウクライナ侵攻で西側陣営とロシアとの対立が長期化する中、2023年2月、プーチン大統領がアメリカとロシアの間の核軍縮条約であるNew START(新戦略兵器削減条約)の履行停止を定めた法律に署名した。
STARTとはStrategic Arms Reduction Treaty(戦略兵器削減条約)のabbreviation(省略語)だが、アルファベットをそのまま読むのではなく「スタート」と読む。こうした語のことを acronym(頭字語)と呼ぶ。NATO や UNESCO なども acronymだ。
「兵器削減」の表現の一つに、arms reductionがある。armの第一義は身体の一部である「腕」だが、「腕力」から転じてarms(武器、兵器〔複数形〕)の意味を持つ。同じように「核兵器削減」にはnuclear arms reductionが使われる。 -
全面禁輸 blanket ban
2023年8月、中国は日本の水産物輸入に対するblanket ban(全面禁輸)を始めた。福島原発で処理水の海洋放出が始まったことへの対抗措置だが、一連の問題は科学的というよりもきわめて政治的な様相を呈している。
日本語でblanketといえば「毛布、ブランケット」をまず思い浮かべるかもしれないが、英語ではその根本的な意味をつかむことが重要だ。blanketとは「全体をすっぽりと覆うもの」と考えれば、そこから派生する「包括的な、全体的な、全面的な」という意味が理解できるだろう。例えば、blanket agreementは「全面的合意」、blanket solutionは「包括的解決」となる。
また、blanketは「~をすっぽり覆う」という他動詞でもある。Heavy snow blanketed a rice field overnight.は「大雪が一夜で田んぼ一面を覆った」という意味だ。coverも「~を覆う」だが、blanketの方がより広い範囲を覆うニュアンスがある。 -
徴用工 wartime laborer
2023年3月、韓国政府は日韓関係の懸案となってきた徴用工問題をめぐる解決策を発表した。この「徴用工」にあたる英語については、英文ニュースメディアの多くはwartime laborer、つまり「戦時中の労働者」と表現している。
直訳でconscripted laborer(徴用された労働者)とする考え方もあるが、conscriptは兵役との関連を強く感じさせる単語で、「徴兵する」という動詞として使われることが多い。
また、歴史観をめぐる政治的な立場の違いから、力ずくによる「強制」か法令に裏付けられた「徴用」かという論争も絶えない。ただし、conscriptの語義としては、公権力による強制を伴う点で両者にさほどの違いはない。wartime laborerという少し漠然とした表現は、こうしたイデオロギー論争を避ける目的も含まれていると考えられる。 -
偵察 reconnaissance
2023年2月、中国の偵察気球がアメリカ本土上空を移動した後、米軍によって撃墜され、安全保障をめぐる米中の外交問題に発展した。このような「偵察気球」はreconnaissance balloonと表現する。より平易な単語を使えばspy balloonとなるだろう。
reconnaissanceは、そのスペリングからもフランス語由来の単語であることがわかる。英語でいうrecognition「 認知・認識」に相当するが、もっぱら「偵察」の意味で使われる。また、reconnaissanceは軍事用語であり、かつ格式の高い表現だと言えるだろう。 -
停戦 cease-fire
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって、プーチン大統領は2023年1月、ロシア正教のクリスマスに合わせて一時的な停戦を指示した。しかし、実際には期間中も各地で戦闘が続き、事実上は行なわれなかった。
この文脈の「停戦」にはcease-fireが使われる。cease(止める)とfire(戦闘)を組み合わせたもので、ハイフンのないceasefireとも表記する。「停戦・休戦」を表す単語には他にもarmisticeやtruceがあるが、armisticeは公式な合意に基づき戦闘状態を停止させることで、truceはそのような裏付けのない一時的な戦闘行為の停止というニュアンスがある。 -
デカップリング decoupling
2023年夏現在、西側諸国とロシアや中国などの経済圏の分断や連携の悪化が続いている。ロシアによるウクライナ侵攻が大きな要因だが、その背景には長年にわたるアメリカと中国による地政学的な覇権争いがあり、decouplingは国際政治経済の文脈でも使われるようになっている。decouplingは日本語でも「デカップリング」と表記されるが、その意味は「分断、分離」だ。
その他のdecouplingの使い方も見ておこう。例えば、decoupling of the company's retail operations from the rest of its businessは、「その企業の小売事業をその他の事業から分離すること」を指す。また電子工学において、decoupling capacitor(デカップリング(減結合)コンデンサ)は、直流と交流成分が混じった電流から直流成分をdecouple(分離する)働きを持つ。 -
電撃訪問 surprise visit
2023年5月に開催された広島G7サミットにウクライナのゼレンスキー大統領が電撃訪問し、ロシアによるウクライナ侵攻について、先進主要国の結束と支援を求めた。
こうした予定外の要人訪問は、surprise visitやsurprise trip(突然の訪問)と呼ばれ、いわゆる「電撃訪問」に相当する。同じように、「予期せぬ突然の出来事」をsurpriseで表すことができる。例えば、surprise attackは「奇襲攻撃」、舞台などへの「飛び入り出演」はsurprise appearance on stageと表現できるだろう。
surpriseを使わない表現では、unscheduled(予定外の)や、unannounced(公表されていない)などの形容詞を組み合わせても近い意味になるが、「驚き」のニュアンスを加えるにはsurpriseが一番だ。 -
難民・避難民 refugee/evacuee
2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始したことにより、ウクライナから多くの避難民が発生した。日本政府や自治体は彼らをevacuee(避難民)やpeople fleeing their country(国外に退避する人々)」などと呼び、「難民(refugee)」とはしていない。同様に、一部メディアは分かりやすく「ウクライナ難民」としているが、慎重なメディアは「避難民」と呼んでいる。
日本が彼らを受け入れているのは緊急の人道的対応だ。今回の措置を1981年の難民条約への加入に合わせて国内整備した「難民認定法」のプロセスとは区別するために、政府は「避難民」の名称を使っているとされる。ちなみに、日本は難民認定がきわめて厳格なことで知られている。 -
反乱 rebellion
2023年6月、ロシアの民間軍事会社で「プーチンの私兵」とも呼ばれるワグネル・グループの創設者、Yevgeny Prigozhin(エフゲニー・プリゴジン)氏が、ロシアによるウクライナ侵攻を批判し、武装蜂起を呼び掛けた。この一連の動きはWagner's rebellion(ワグネルの反乱)と名付けられた。
rebellionとは、武力をもって政府など覆そうとする試みで「反乱、反逆、謀反」などを表す。この意味では日常生活で使うことは少ないだろう。また、こうした動きに加わる者は、名詞のrebel(反逆者)だ。
rebellionには「(権威や慣習に対する)反抗、抵抗」という意味もあり、rebellious(反抗的な)はその形容詞だ。若者が大人社会に反抗するという文脈でよく使われる。young and rebelliousは「若くて反抗的」、あるいは「青臭くてツッパった」という意味だ。 -
飛翔体 projectile
北朝鮮のミサイル発射実験が後を絶たず、実験を繰り返すごとに到達距離や精度が向上しているとの見方もある。北は「衛星打ち上げ」などの非軍事的目的を主張するため、周辺国はmissile launch(ミサイル発射)とは即断できない。「飛翔体」や、最近では「宇宙発射体」などの回りくどい表現が使われるのはそのためだ。
projectile(飛翔体)とは物理学の用語で、「外的な力で押し出され、慣性によって動き続けるもの」と定義され、銃から発射された弾丸などが代表的だ。ballistic missile(弾道ミサイル)もprojectileの一種である。ただし、projectileは日常生活では接することのない単語だと言えるだろう。
一方、ミサイルが描く「軌道」をtrajectoryと呼ぶ。幾何学の「軌跡」や、「人生の歩み」という比喩としての軌跡もtrajectoryだ。また、発射されたミサイルが描く「放物線」はparabolaで、身近なところでは受信した電波を一点に集中させるparabola antenna(パラボラアンテナ)の原理に利用されている。 -
報復 retaliation
2024年8月、イランによるイスラエルへの「報復」の可能性が中東情勢の大きな懸念となった。7月にイスラム組織ハマスのイスマイル・ハニヤ最高指導者がテヘランで暗殺されたことが原因だ。イスラエルは本件への関与について言及していない。イラン最高指導者のハメネイ師は報復を表明したが、実行されるかどうかについてはさまざまな軍事的、外交的な思惑がからんでいる。
「報復」にはいくつかの英単語があり、retaliationやrevengeがまず思い浮かぶ。ただし、その用法には注意が必要だ。revengeは報復の中でも「復讐、仕返し、仇討ち」などの個人的な恨みの感情が含まれる。これに対して、retaliationはより中立的なニュアンスを持ち、revengeよりも広い文脈で使うことができる。今回のような国家レベルの軍事的、外交的な文脈にはretaliationがふさわしいと言えるだろう。なお、動詞はretaliate(報復する)だ。
また、revengeとよく似た単語にavengeがある。avengeは「報復する、復讐する」という動詞である一方、revengeには名詞と動詞の用法がある。 -
水際対策 border control
border controls(通常は複数形で用いる)とは、国境をまたぐ人や物の出入りを管理することだ。borderは「境界線」だが、ここでは「国境」の意味で使われる。
ニュースの話題によって、それが指すものが変わることに注意したい。例えば、アメリカ人がborder controlsと聞けば、メキシコとの国境から侵入する人々に対する「国境管理」として受け止めるだろう。一方、日本についての記事でborder controlsとあれば、近年のコロナ対策としての「水際対策」、つまり空港での検疫強化を指す可能性が高い。もともと日本は陸で隣国と接していないため「国境」は「水際」なのだ。
またborderは、動詞で「隣接する、境界を分かち合う」という意味を持ち、Among Japan's 47 prefectures, Nagano borders the largest number of neighboring prefectures.(全国47都道府県の中で、長野県は最も多くの隣県と接している)のように使う。 -
領土問題 territorial dispute
ウクライナ戦争はヨーロッパだけでなく、極東の安全保障にも影を落としている。特に北方領土をめぐる日本とロシアのterritorial dispute(領土問題、領土紛争)が解決される見通しはますます遠のいている。
名詞territoryが「領土」であることから、その形容詞territorialは「領土に関する」という意味だ。また、dispute(論争、紛争)の代わりに 、row(騒動、けんか)や issue(問題)を使ったterritorial rowやterritorial issueという表現も、「領土紛争、領土問題」としてよく使われる。
また、少しカジュアルなニュアンスになるが、spat(論争、口論、けんか)を使ってterritorial spatと表現することもできるだろう。
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